介護と仕事の両立を続ける中で、私は次第に追い詰められていることに気づいた。朝から夜まで慌ただしく動き回る毎日。母のために、仕事のためにと動いているうちに、自分の時間はほとんど消えてしまっていた。ある日、職場の昼休みにふと鏡を見て、自分のやつれた顔に驚いた。「このままでは続かない」。そう思い始めてから、少しずつ課題と向き合い、解決策を探すことにした。
1. 時間的負担:止まらない時計
介護を始めてから、私の1日はまるで休む間がない。朝5時に起きて母の朝食を準備し、着替えを手伝い、デイサービスに送り出す。その後は仕事に向かい、職場ではプロジェクトの進行に追われる。帰宅後は母の夕食を用意し、家事をこなし、夜は母が徘徊する可能性に備えて眠りも浅い。結果として、自分のための時間はほぼゼロだ。
そんな生活を続けるうちに、自分の余裕がどんどんなくなっていくのを感じた。
解決策を模索してみた:
- 在宅勤務や時短勤務を会社に相談
上司に思い切って事情を話すと、週に数日だけ在宅勤務を認めてもらえるようになった。通勤時間が減るだけでも、母の世話に使える時間が増えた。会社に迷惑をかけたくないと思っていたが、相談してみて本当に良かった。 - デイサービスやショートステイの活用
ケアマネージャーに相談し、週に2回だったデイサービスを3回に増やした。さらに、ショートステイも利用することを決めた。母が外出する時間が増えることで、私はほんの少しだけ自分の時間を持てるようになった。 - 朝晩のルーティンを効率化
朝食や夕食をまとめて作り置きするなど、家事の効率を上げる工夫をした。少しでも時間が浮くと、それが心の余裕につながる。
2. 精神的負担:揺れる心
母が認知症と診断されてから、以前のような会話ができなくなったことが一番つらかった。母が私を忘れ、「あなた誰?」と聞いてくるたびに、胸の奥が締めつけられる。さらに、母が時折見せる怒りや苛立ちにどう対応すれば良いのかわからず、私自身も感情をぶつけてしまうことがあった。そのたびに、後悔と罪悪感で押しつぶされそうになる。
解決策を試してみた:
- 同じ悩みを持つ人との交流
地域の介護者の会やSNSのコミュニティに参加してみた。他の人たちが同じような体験をしていることを知ると、私だけが苦しんでいるわけではないと感じられた。それは、予想以上に大きな安心感をもたらしてくれた。 - カウンセリングの利用
一度だけカウンセリングを受けてみたことがある。自分の感情を整理し、涙を流すことで心が軽くなった。言葉にすることで、閉じ込めていた気持ちが少し解放された気がした。 - 日記を書く
誰にも言えない思いを日記に綴るようになった。母の笑顔に救われた日も、感情をぶつけてしまった日の後悔も、すべて書き出すことで気持ちが整理されるようになった。
3. 経済的負担:増え続ける費用
介護が始まってから、思っていた以上にお金がかかることに気づいた。介護用品や薬、デイサービスの利用料、そして突発的に発生する費用。私の収入で賄うのは限界があり、経済的な不安が常につきまとった。
解決策を考えた:
- 公的支援制度を最大限活用
市区町村の介護保険サービスを活用し、介護用品の一部を補助金で賄えるよう手続きを進めた。また、母に障害者手帳を申請し、医療費の負担を軽減することができた。 - 家族との相談
思い切って兄弟に相談し、母の介護費用を少しずつ分担する形を取ることにした。最初は遠慮していたが、話し合ってみると「最初に相談してくれれば良かったのに」と言われ、もっと早く話せばよかったと気づいた。
課題を乗り越えるために
介護の負担は、決して一人で抱えられるものではない。時間の工夫や周囲の助けを借りることで、少しずつ生活が回るようになってきた。それでも解決しきれない部分もあるが、課題に向き合うことで、以前より少しだけ心に余裕が生まれた。
私はまだ試行錯誤の途中だが、この生活の中で学んだことがある。それは、「すべてを一人でやろうとしない」ということ。介護は孤独になりがちだが、他人に頼ることで前に進む力が得られる。少しずつ、無理なく歩み続ける。それが今の私にできる精一杯だと思っている。