祖母と食卓で紡ぐ日々 第四章:医師から学んだ「食べ方」と「食べ物」

嚥下障害に向き合う新たな学び

嚥下障害と診断されてからしばらく経った頃、祖母の食事をどう改善すればよいかをもっと具体的に知る必要があると感じた私たちは、祖母を連れて医師の指導を受けることにした。嚥下障害の専門医との面談では、どのように食べるか、そして何を食べるべきかについて具体的なアドバイスを受けることができた。


飲み込みの基本「姿勢」と「ペース」

診察室で医師は、祖母にこう尋ねた。
「食べるとき、背中が丸くなっていませんか?」

私たちは普段の食卓の様子を思い浮かべ、少しハッとした。祖母は座り方が安定せず、いつも少し前かがみに食事をしていることが多かったのだ。

「食事の際には、背筋を伸ばし、少し前傾姿勢を保つことが大切です。」
医師はそう説明しながら、食事に適した姿勢を具体的に教えてくれた。そして、飲み込むタイミングやペースも重要だという。
「一口の量を少なくし、一度飲み込むごとに飲み込みが完了しているか確認してください。急いで食べると、誤嚥のリスクが高まります。」

これらのアドバイスは、当たり前のようでいて、私たちがこれまでほとんど意識してこなかった重要なポイントだった。


どのように食べるかを支える道具

さらに、医師は嚥下障害をサポートするための道具も紹介してくれた。たとえば:

  • とろみ剤:スープやお茶、ジュースにとろみをつけ、液体が気管に入りにくくする。
  • 特殊なスプーンやフォーク:飲み込みやすい形状やサイズで設計されたカトラリー。
  • 滑り止め付きのお皿:祖母が安定して食べ物をすくえるよう工夫されたもの。

「これらを取り入れることで、食事がより安全で快適になりますよ。」
医師の言葉に、私たちはすぐに試してみたいという気持ちになった。


何を食べるかの重要性

次に話題に上がったのは、「何を食べるべきか」だった。医師によれば、嚥下障害のある人に適した食べ物は以下の3つの特徴を持つという。

  1. 柔らかく、簡単に噛み切れるもの
    肉や野菜は圧力鍋やスロークッカーで煮込み、とろけるような食感にする。
  2. 口の中でまとまりやすいもの
    パサついた食べ物は口の中でバラバラになりやすいため、つなぎを加えるかソースを絡めて一体感を持たせる。
  3. 適切なとろみのあるもの
    液体はとろみを加えることで、飲み込みやすさが格段に向上する。

「具体的な食事例としては、やわらかく煮た豆腐料理、魚のすり身団子、そしてとろみをつけたポタージュスープが良いですね。」

医師は祖母の年齢や好みも考慮しながらアドバイスをくれた。


NGな食品リスト

逆に、避けるべき食品についても説明があった。以下のような食品は嚥下障害のある人には向かないという。

  • 乾燥したもの:クラッカー、ビスケットなど。
  • 粘り気が強いもの:とろろ、納豆(適切なとろみ調整ができない場合)。
  • 硬いもの:生野菜、硬い肉類。

これらの食品がどのように嚥下を妨げるかを具体的に聞き、私たちは改めて食材選びの大切さを痛感した。


家庭での取り組みへの助言

最後に医師は、家庭でできる工夫についても触れた。
「嚥下リハビリや食事の工夫は家族の協力があってこそ効果を発揮します。食事は単なる栄養補給ではなく、楽しみの時間でもあることを忘れないでください。」

私たちはその言葉に大きく頷いた。家族で一緒に取り組むことが、祖母の気持ちを支える鍵になるのだ。


帰宅後の第一歩

家に帰ると、私たちは医師から教わったことをすぐに実践に移すことにした。祖母にとって適した姿勢で食事をするよう椅子を調整し、とろみ剤を使ったスープを出してみた。

「どうかな、おばあちゃん?」
「うん、飲み込みやすいわ。」

その一言に、私たちは小さな成功を感じた。そして、家族全員が同じ方向を向いて食事を見直すことの大切さを再認識した。

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