私は要介護の母と暮らしています。母は70代後半になってから足腰が弱くなり、転倒の危険性が高まっていました。特に玄関や浴室の段差、廊下の狭さが原因で日常生活の動きにくさを目の当たりにするたびに、もっと安全で快適な生活環境を整えてあげたいという思いを強く感じるようになりました。しかしながら、家全体を改修するための工事費用を考えると、限られた家計の中でどこまでできるのかが大きな課題となりました。
そんなとき、ケアマネジャーさんから介護保険を利用した住宅改修制度の話を聞きました。この制度では、要介護認定を受けている場合、最大20万円までの工事費用が補助されるとのことでした。手すりの設置や段差の解消、床の滑り止め加工など、自宅内での安全性を高めるための改修が対象となるため、これなら手軽に取り組めるかもしれないと思い、早速申請を始めることにしました。
最初に取り掛かったのは、母が日常的に使う玄関と廊下の手すり設置です。母が安心して移動できるように、ホームセンターやネット通販を利用して簡単に取り付けられるタイプの手すりを購入しました。自分で設置することに挑戦し、壁にドライバーを使って固定しました。手すりを設置する際には、母がつかまりやすい高さを意識しながら取り付け位置を決めました。また、玄関の靴を脱ぐ場所や廊下の曲がり角といった、特に母が動きにくそうな場所を優先して設置しました。
初めてのDIYでの作業だったため苦労もありましたが、母が「これがあると安心して歩ける」と笑顔を見せてくれたことがとても嬉しかったのを覚えています。手すりがあるだけで、母の表情や行動に変化が見られたことに驚きました。
次に取り組んだのは浴室の安全対策です。浴室は水で滑りやすく、特に転倒のリスクが高い場所のため、慎重に対応する必要がありました。ここでも介護保険の助成を利用し、滑り止めシートを購入して浴室の床に敷きました。このシートは防水素材でできており、浴室に合わせてカットして敷くだけという簡単なものでした。ただ、水が溜まる部分ではシートが浮きやすかったため、防水テープを使って固定する工夫をしました。
さらに、母が浴槽に出入りする際の負担を軽減するため、浴槽の縁に取り付けられる吸盤式の手すりを設置しました。この手すりは私でも簡単に取り付けられるものでしたが、母が実際に使ってみた際に「これがあると安心して浴槽に入れる」と話してくれたことから、改めて設置してよかったと感じました。
こうして介護保険を活用して自宅の一部を改修することができましたが、自分で取り組める部分には限界があることにも気づきました。例えば玄関や浴室の段差を簡易的なスロープで対応していましたが、母が車椅子を使うようになった場合には、もっと根本的な改修が必要です。また、廊下の幅が狭いことも、母が歩行器を使うときに動きが制限される原因となっていました。
そこで知ったのが、自治体が提供する高齢者住宅改修費用助成制度です。この制度では、介護保険ではカバーしきれない大規模な改修工事の費用を一部補助してもらうことができるというものでした。私の住む自治体では最大50万円までの助成が受けられることが分かり、これを利用すればより大きな改修ができると希望を持つことができました。
自治体の助成制度を利用するためには、申請に必要な書類を準備し、工事内容を事前に確認してもらう必要がありました。手続きには少し手間がかかりましたが、福祉専門のリフォーム業者やケアマネジャーさんのサポートもあったため、スムーズに進めることができました。そして、いよいよ自宅全体を見直す大規模な改修工事に取り掛かることとなりました。