手すりの設置– 安全で快適な生活を支える基本のバリアフリー対策 –

手すりにつかまる高齢者

手すりの設置は、介護が必要な方や高齢者が自宅で安全に生活するための基本的なバリアフリー対策のひとつです。日常生活での転倒リスクを減らし、安心して移動や立ち座りができるようにするために、各場所に適切な手すりを設置することが重要です。以下では、手すりの設置が必要な場所や設置時のポイントについて詳しく解説します。


目次

1. 手すり設置のメリット

手すりは、高齢者や身体が不自由な方にとって体を支えたり、転倒を防ぐために欠かせないサポートです。日常生活でのさまざまな動作を補助する役割を果たし、以下のようなメリットを提供します。

  • 転倒リスクの低減:立ち上がる時や移動する際に体を支えるため、転倒やつまずきによるけがを防ぎます。
  • 自立支援:手すりを使うことで、自分での立ち座りや移動が可能になり、自立した生活を続けやすくなります。
  • 介護者の負担軽減:利用者が手すりを使って移動や動作ができるため、介護者の介助負担が軽くなります。

2. 手すりの設置が推奨される場所

手すりを設置する際は、日常生活で特に転倒やふらつきが起こりやすい場所に設置するのが効果的です。以下は、手すりの設置が推奨される主な場所です。

(1) 玄関

玄関では、靴の脱ぎ履きや段差の上り下りが発生するため、ふらつきや転倒が起こりやすくなります。玄関に手すりを設置することで、安全に立ち上がったり、靴を履いたりできるようになります。

  • 設置ポイント:上がりかまち(玄関の段差部分)に沿って手すりを設置し、靴の脱ぎ履きがしやすい高さにすることが推奨されます。

(2) 廊下

廊下では、部屋間の移動が多く、ふらつきが生じやすいため、手すりがあると移動の際にバランスを取りやすくなります。

  • 設置ポイント:廊下の壁側に沿って手すりを設置し、利用者が歩きながら体を支えられるようにします。左右どちらかの壁に手すりが設置されているとスムーズです。

(3) 階段

階段の上り下りは足腰に負担がかかるため、転倒リスクが高まります。階段に手すりを設置することで、階段での移動が安全になり、上り下りがしやすくなります。

  • 設置ポイント:階段の両側に手すりを設置するのが理想的ですが、少なくとも片側には必ず設置しましょう。階段の始まりと終わりがしっかり支えられる位置に設置するとより効果的です。

(4) トイレ

トイレは立ち座りの動作が発生する場所であり、特に高齢者や膝に負担がある方にとっては転倒しやすい場所です。トイレの手すりは、スムーズに立ち上がったり座ったりできるようサポートします。

  • 設置ポイント:トイレの横または後方にL字型やU字型の手すりを設置することで、立ち座りがしやすくなります。左右に設置できる場合は、両側に手すりをつけるのが理想的です。

(5) 浴室

浴室は水で濡れるため滑りやすく、転倒リスクが特に高い場所です。浴槽への出入りや、シャワーを浴びる際の安全を確保するために手すりを設置します。

  • 設置ポイント:浴槽の縁やシャワーの位置に合わせて手すりを設置し、滑りにくい素材を選ぶことが重要です。また、座って体を洗えるように、シャワーチェアの近くに手すりを設置すると便利です。

3. 手すりの種類と選び方

手すりには、利用者のニーズや設置場所に応じたさまざまな種類があります。安全性や使い勝手を考慮し、適切な手すりを選ぶことが大切です。

(1) 固定型手すり

壁や床に固定して設置する手すりで、安定性が高く、廊下や階段、浴室などに適しています。

  • メリット:しっかり固定されているため、体重をかけてもぐらつかず安全です。
  • デメリット:一度設置すると移動ができないため、取り外しが難しいこともあります。

(2) 吸盤式手すり

吸盤で固定するタイプの手すりで、浴室やトイレなど、一時的に設置したい場所に便利です。

  • メリット:設置が簡単で、取り外しや移動も手軽にできるため、臨機応変に使えます。
  • デメリット:吸盤の吸着力が弱まると外れやすくなるため、頻繁な確認が必要です。

(3) 移動式手すり(スタンド型)

床にスタンドを置くだけで設置できる移動式の手すりで、玄関やトイレなど、一時的に手すりを使いたい場所に適しています。

  • メリット:設置場所を選ばず、必要なときに簡単に移動できるため便利です。
  • デメリット:固定型と比べると安定感に欠けるため、強い力で押し倒しやすい場合があります。

4. 介護保険を利用した手すり設置の補助制度

手すりの設置には、介護保険の住宅改修制度を利用することが可能です。要介護認定を受けている方が対象となり、必要な場所に手すりを設置する際の費用が一部補助されます。

  • 対象者:要支援1・2、要介護1〜5に認定された方
  • 補助金額:1人あたり最大20万円(自己負担分あり)
  • 申請方法:市区町村の介護保険課に申請し、承認を受けた後に工事を行います。

介護保険を活用することで、手すりの設置費用負担を抑えられるため、経済的な負担を軽減できます。

介護保険の手続きについて詳しく知るには「介護保険の申請方法と流れ – はじめて介護保険を利用する方への手順ガイド」も参考にしてください。

手すりの設置は、日常生活を安全に過ごすための重要なバリアフリー対策です。手すりを適切な場所に配置することで、高齢者や介護が必要な方の自立をサポートし、転倒リスクを軽減できます。また、介護者の負担軽減にもつながり、安心して日常生活を送るための環境づくりに役立ちます。介護保険の補助制度も活用しながら、適切な手すりを設置して、より快適な生活をサポートしましょう。

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