更衣介助のやり方とコツ– 利用者が快適に衣服を着脱できるサポート方法 –

着替えをする高齢者と介護士

更衣介助は、利用者が衣服を安全に着脱できるようにサポートする介護の一環です。衣服の着脱は日常生活の基本的な動作であり、利用者が自立して行えれば生活の質が向上します。


しかし、身体の不自由な方や認知機能が低下している方には適切なサポートが必要です。ここでは、更衣介助の基本的な流れや注意点、衣服の選び方、各種ケースに応じた介助方法について詳しく解説します。

更衣介助の目的と重要性

更衣介助は、利用者が快適に、そして安全に衣服を着脱できるようサポートする介護行為です。衣服の着脱は自分らしさを感じるためにも重要な行為であり、特に高齢者や身体に障害がある方にとって、無理のない着脱が心身の健康に大きく影響します。


更衣介助によって利用者の自立を支え、生活の質を向上させることが介助の目的です。

更衣介助のやり方

1. 事前準備

更衣介助を始める前に、利用者に合わせた衣服を選び、清潔で動きやすい状態を整えます。更衣に必要な衣服(シャツ、パンツ、靴下など)を近くに用意し、衣類の順番を確認しておきます。また、室温を適切に調整し、利用者が寒さや暑さを感じない環境を整えます。

2. 利用者への声かけ

更衣介助はプライバシーに配慮しつつ、利用者がリラックスできるように声かけを行います。「これから服を着替えますね」と一声かけて、利用者が安心して介助を受けられるようにし、更衣の流れを説明します。また、着替えが進むごとに「袖を通します」「足を上げましょう」など、段階的に声をかけ、利用者の協力を得ながら進めます。

3. 衣服の脱ぎ方のサポート

衣服を脱がせる際は、利用者が無理な体勢にならないように注意し、自然な動きでサポートします。例えば、腕や足の関節に配慮しながら袖やパンツの裾を少しずつ下げ、体に負担をかけないように脱がせます。腕や足が不自由な方には、無理な力をかけず、ゆっくりとしたペースでサポートします。

4. 衣服の着方のサポート

衣服を着せる際には、利用者ができるだけ自力で行えるように配慮します。利用者の体に合わせて衣服を適切に広げ、袖やパンツの足口を広げて、腕や足を通しやすくします。特にシャツや上着の場合は、袖を片方ずつ通し、肩が引っかからないように注意しながら衣服を整えます。ボタンやファスナーの留め方も、利用者の動きやすさを意識して行います。

更衣介助の注意点

1. 無理のない姿勢の確保

更衣介助では、利用者が無理のない姿勢を保てるよう、介助者がしっかりと支えます。座った状態やベッドに横たわった状態で衣服を着脱することが多いため、利用者の体に合わせた姿勢を調整し、関節への負担がかからないように配慮します。

2. 衣服の選び方

衣服は利用者の身体状態に応じたものを選ぶことが重要です。脱ぎ着しやすいようにボタンやファスナーが少ないもの、伸縮性のある素材の衣服が望ましいです。また、季節や室温に合わせて利用者が快適に過ごせる衣服を用意します。特に、圧迫感が少なく着心地の良い衣服を選ぶことで、利用者の負担を軽減できます。

3. 衣服の順番と整え方

更衣介助では、衣服の順番を意識し、効率的に着脱を行います。例えば、上着を脱いでからパンツや靴下を脱ぐなど、一連の流れがスムーズになるよう工夫します。また、衣服をきちんと整え、シワがない状態で利用者が快適に過ごせるようにします。

特殊なケースの更衣介助方法

1. 関節が不自由な方の更衣介助

関節に不自由がある方の場合、腕や足が動かしにくいため、無理な動作を避けるために衣服の形状を工夫します。例えば、前開きのシャツや伸縮性のあるズボンなど、関節に負担がかからない衣服を選ぶことが重要です。袖やパンツの足口を広げ、関節の動きを補助しながらゆっくりとサポートします。

2. 認知症の方への更衣介助

認知症の方は、着替えの意味や手順を理解するのが難しいことが多いです。着替えの前には穏やかな声かけで、安心して着替えに臨めるようにします。また、色分けなどを利用して、服の上下や左右が分かりやすいように工夫するとスムーズに進みます。認知症の方が戸惑った場合は、無理をせず、落ち着いて対応することが大切です。

更衣介助における転倒・怪我防止の工夫

1. 転倒しにくい環境づくり

更衣介助を行う場所には、利用者が転倒しにくいように環境を整えます。滑りやすい床には滑り止めマットを敷いたり、手すりを設置したりして、支えがある状態を作ります。座った状態での着替えが難しい場合は、ベッドや椅子を利用し、安定した姿勢を確保します。

2. 衣服の取り扱い方法

衣服の取り扱い方法も、怪我の防止に関わります。利用者の関節や筋肉に負担がかからないよう、袖や裾を少しずつ引き出すようにしてサポートします。利用者の体を無理に動かさず、柔軟に対応することで、負担を最小限に抑えます。

更衣介助を行う介助者の負担軽減の工夫

1. 正しい姿勢の維持

更衣介助では、介助者が無理な体勢を続けないように、正しい姿勢を保ちながらサポートします。膝を曲げ、腰を落として利用者の体に合わせた位置で介助を行うことで、介助者の腰や背中への負担が軽減されます。特に長時間の介助が必要な場合は、姿勢に注意し、無理のない範囲で作業を行います。

2. 衣服の準備と動線の確保

更衣介助を行う前に、衣服を準備しておくことで、介助の動線が確保され、無駄な動きを減らせます。また、衣類を脱がせる際にも、脱ぎやすい順に進めることで効率が上がり、介助者の負担が減ります。

3. サポート体制の活用

場合によっては、一人で更衣介助を行うのが難しい場合もあります。その際には、他の介助者と協力することで負担を分担できます。二人以上で対応することで、スムーズで安全な介助が実現し、利用者の安心感も高まります。

季節や体調に合わせた更衣介助の工夫

1. 季節に応じた衣服の選択

夏は通気性が良く、汗を吸収しやすい素材の衣服を選び、冬は保温性の高いものを選ぶなど、季節に応じた衣服を選ぶことが大切です。利用者の体温調整がしやすく、快適な環境を保てる衣服を選ぶことで、体調管理にも役立ちます。

2. 体調に応じた衣服の調整

体調に合わせて衣服を選ぶことで、利用者の快適さを保つことができます。例えば、発熱がある場合には軽い衣服にする、逆に寒がっている場合には保温性のある衣服を選ぶなど、体調に合わせた配慮が必要です。また、体調が悪い際には、短時間で済む衣服の選択をすることで、負担を減らすことができます。

精神的な安心感を重視した更衣介助

1. 利用者の意見を尊重する

更衣介助においては、利用者の好みや希望を聞き入れることが重要です。どの衣服を着たいか、色やデザインなどの好みを尊重し、本人が納得できるように進めることで、利用者の心理的な安心感が高まります。自分で選ぶことで自主性を感じ、日常生活への意欲も向上することが期待されます。

2. 声かけとリラックスできる雰囲気づくり

更衣介助中には、声かけを通じて利用者がリラックスできる雰囲気を作ることが大切です。「次は袖を通しますね」「あと少しです」といった具体的な声かけを行い、利用者が安心して介助を受けられるようにします。また、急かさずゆったりとした雰囲気で進めることが、利用者にとって心地良い介助になります。

更衣介助のやり方については、新潟県社会福祉協議会の『在宅介護に必要な基本介護技術「着脱の介助」篇』も参照にしてください。

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