介護保険利用時の注意点– 安心してサービスを受けるために知っておきたいこと –

介護保険

介護保険制度は、介護が必要な高齢者やその家族にとって重要な支えですが、制度で提供されるサービスには一定の制限があります。通院の付き添いや夜間の見守りなど、日常生活で実際に必要とされるサポートが、介護保険では対応できない場合があります。


ここでは、こうした介護保険の制約について、具体的な例を挙げながら詳しく解説し、これらのニーズに応じた代替手段や民間サービスの活用方法についても紹介します。



1. 介護保険で対応できるサービスとできないサービス


介護保険制度では、高齢者の生活を支えるために多くのサービスが提供されていますが、利用できる範囲には制約があります。基本的に、介護保険での支援は「日常生活の維持や自立支援」を目的としており、「付き添いや長時間の見守り」といった継続的な見守りや介護の負担軽減に直接対応するものではありません。



  • 対応可能なサービス


    介護保険で受けられるサービスには、訪問介護やデイサービス、短期入所などがあります。訪問介護では、ヘルパーが定期的に訪問して掃除や食事の準備、排泄介助などを行いますが、一定の時間内で終了します。


    また、デイサービスでは、介護施設でのレクリエーションやリハビリ、食事の提供などを受けられますが、利用時間が決まっており、夜間の見守りや急な付き添いなどは対象外です。

  • 対応できないサービス


    通院時の付き添い、自宅での長時間介護、夜間の見守りといった「家族が代わりに行っているような細かなケア」には、介護保険は基本的に対応していません。これらは介護保険の適用範囲外であり、家族や別の民間サービスに依存することが多くなります。


    見守りサービスについては下記も参照してください。

2. 通院付き添いが介護保険でカバーされない理由
介護保険制度は、日常生活を支えるための支援を目的としており、通院や外出の付き添いは原則として自己負担です。


その理由の一つには、通院や外出は「医療行為に付随するもの」とされている点があります。医療機関への移動や待ち時間、診察の付き添いは、介護保険の支援対象ではなく、一般の交通手段や医療機関が提供する介助が優先されます。

  • 代替手段としての移動サービス


    地域によっては、介護タクシーや福祉タクシーといった移動支援サービスが提供されています。これらは予約制で、高齢者や障がい者の移動をサポートするためのサービスです。


    民間の介護タクシー業者やNPOが提供している場合も多く、料金は自己負担ですが、自治体が一部補助を行っているケースもあります。介護タクシーは通常のタクシーよりも車内が広く、車椅子のまま乗車できるなど、要介護者に配慮した設計になっていることが特徴です。

  • 地域包括支援センターの活用


    各自治体には地域包括支援センターが設置されており、要介護者の通院や移動に関する相談が可能です。地域包括支援センターは、地域の福祉・医療機関と連携して、通院や外出に関する支援策や補助金情報などを提供しています。

    必要な場合は、家族で相談し、どのようなサポートが受けられるかを確認するとよいでしょう。


3. 自宅での長時間介護が求められる場合


介護保険の訪問介護サービスは、一般的に1~2時間程度の短時間で提供されるため、長時間の介護は難しいです。要介護者が自宅で常に見守りを必要とする場合、介護保険以外の支援策を検討する必要があります。

  • 自費訪問介護サービスの活用


    介護保険外の自費訪問介護サービスを利用することで、長時間の介護や細かいケアを受けることが可能です。民間の訪問介護事業者が提供しているサービスでは、1時間以上の見守りや要介護者の話し相手、趣味活動のサポートなど、介護保険ではカバーできない部分もサポートしてくれます。


    ただし、これらは全額自己負担となるため、費用の確認と計画が必要です。

  • 家族支援のためのレスパイトケア


    長時間の介護が必要な場合、介護者の負担を軽減するためのレスパイトケアが役立ちます。レスパイトケアは、介護者が一時的に休息を取れるよう、要介護者をショートステイやデイサービスなどに一時的に預かるサービスです。これにより、家族は負担を軽減しつつ要介護者を安心して預けられます。


4. 夜間の見守りニーズへの対応策


夜間の見守りも介護保険の適用外であり、特に認知症の方や夜間の徘徊がある方にとっては家族の負担が大きくなります。

  • 夜間の民間見守りサービス


    民間の見守りサービスには、夜間にスタッフが訪問する「夜間訪問介護」や、モニタリング機器を活用した見守りサービスがあります。夜間訪問介護では、介護スタッフが夜間に定期的に訪問して、要介護者の安全確認や必要な介助を行います。


    一方、モニタリング機器を活用したサービスでは、部屋にセンサーやカメラを設置し、要介護者の動きを遠隔で確認することが可能です。これにより、夜間の異変に迅速に対応できます。




  • 認知症高齢者グループホームの活用


    夜間の見守りが特に必要な場合、認知症高齢者のためのグループホームの利用を検討することも一つの方法です。グループホームは、少人数で共同生活を送る施設で、日中から夜間までスタッフが常駐し、24時間体制で介護と見守りを行います。


    認知症高齢者に特化した施設も多く、夜間に徘徊や混乱が生じた場合でも適切に対応できる体制が整っています。


    高齢者や要介護者の夜間の見守りについては以下も参照にしてください。



5. 家族や支援者が知っておくべき他の補助制度


介護保険外のサービスが必要な場合、他の補助制度や地域の支援策も活用できます。地域や自治体によっては、介護者や要介護者を支援するための補助金や助成金が提供されていることもあります。

  • 自治体の介護支援事業


    自治体が提供する介護支援事業には、民間サービスを活用する際の費用を一部負担する制度や、介護タクシーの補助、介護用品の購入助成などがあります。これらの支援策は、地域包括支援センターなどで案内されているため、介護に関する総合相談を通じて確認することが可能です。

  • 高齢者支援制度の活用


    高齢者に向けた見守り制度や生活支援サービスを提供している自治体もあります。高齢者の見守りネットワークや、緊急時の駆けつけサービスなどは、介護者が自宅での介護に集中できるように支援する制度です。地域の包括支援センターに相談することで、利用可能な制度を知ることができます。

介護保険を利用する際は、基本的な仕組みや利用限度額を理解し、適切なサービスを選ぶことが大切です。申請時の手続きでは必要書類や条件を確認し、ミスを防ぎましょう。


また、ケアマネージャーと連携して、利用者に最適な支援計画を立てることが成功の鍵です。限度額を超えないよう費用管理を徹底し、デイサービスや訪問介護などのサービスを効率的に組み合わせることで、介護者の負担を軽減できます。


事前に注意点を押さえておくことで、安心して介護保険を活用できるでしょう。

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