介護用ベッドは、高齢者や介護が必要な方の生活を支え、介護者の負担も軽減する重要なアイテムです。特に、体の負担を軽減するために高さ調整や背上げ機能などが備わっているため、日常生活をより快適に、そして安全に過ごすことができます。
一方で介護用ベッドは高機能だと高額になったり、設置スペースに問題が出たりなど、メリット・デメリットが大きな製品です。そこでここでは、介護用ベッドの特徴や選び方、使用する際のポイントについて詳しく解説します。
1. 介護用ベッドの基本的な特徴
介護用ベッドは、一般的なベッドとは異なり、高齢者や介護が必要な方の体の状況に合わせた多機能な設計が特徴です。以下は、介護用ベッドに備わる主な機能です。
- 高さ調節機能:ベッドの高さを変えることで、立ち上がりやすさが向上し、介護者の負担も軽減します。利用者がベッドから起き上がる際、膝や腰の負担が少なく、介助がしやすい高さに設定できます。
- 背上げ・足上げ機能:背上げや足上げができるため、体を起こす姿勢や足を高くする姿勢を簡単にとることができ、リラックスしたり食事をとったりするのに便利です。
- サイドレール:ベッドの横にサイドレール(柵)がついていることで、転落防止ができるため、夜間でも安心して眠れます。また、サイドレールに手すりが付いていると、立ち上がりの際にも利用できます。
- リモコン操作:リモコンで簡単に調整が可能で、利用者自身が快適な体勢に変更しやすくなります。操作も直感的でわかりやすい設計が多いです。
2. 介護用ベッドのメリット・デメリット
介護用ベッドの導入には、さまざまなメリットがあります。一方でデメリットもあります。介護生活をサポートする上でメリット・デメリットのポイントを紹介します。
介護用ベッドのメリット
- 自立支援:介護用ベッドがあることで、自分で起き上がったり、立ち上がりがしやすくなるため、介助が必要な方でも自立した生活を続けやすくなります。
- 介護者の負担軽減:高さや背もたれの調整ができるため、介護者が無理な姿勢で介助する必要が減り、体の負担が軽くなります。
- 快適な休息:寝たきりの方や長時間ベッドで過ごす方にとって、体位変換がしやすいため、床ずれや血行不良を防ぎ、快適な姿勢を維持できます。
介護用ベッドのデメリット
1. 費用負担が大きい
- 高機能なモデルは数十万円する場合もあり、購入コストが高い。
- レンタルサービスを利用する場合でも月額料金が発生。
2. スペースの確保が必要
- サイズが大きいため、設置場所を確保する必要があります。狭い部屋では置きにくい場合も。
3. 電動ベッドの操作トラブル
- 電動機能が故障した場合、修理費用や時間がかかる。
- 停電時には操作が制限されることがある。
4. 要介護者の依存が進む可能性
- 便利すぎる機能があると、自立心が損なわれる恐れも。
5. 導入の心理的ハードル
- 介護ベッドを使用することで「自分は要介護者だ」と認識してしまい、心理的負担を感じるケースも。
購入後に問題になりやすいケース
介護用ベッドは非常に便利な器具です。介護する側・される側、双方の負担を大幅に軽減することができます。一方で、問題になりやすいケースも存在しています。
- 介護度の変化
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最初は自力で起き上がったり、歩いたりすることができる方でも、加齢や筋肉の衰え、認知症の進行などによって介護度が上がることがあります。
そのため、初めに必要最低限の機能を備えた介護ベッドを購入した後、寝たきりになってしまった場合、新規にベッドを買い直さなければなりません。この場合、以前に購入したベッドを処分したり、新しいベッドの購入に余分な費用がかかるなどの問題が生じることがあります。 - ケアの質の変化
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これまでは在宅介護だったものの、ショートステイを頻繁に利用したり、また老人ホームへの入所を検討するようになると、これまで必要だった介護ベッドの利用頻度も次第に少なくなってきます。こうなるとせっかくの介護ベッドも宝の持ち腐れになりかねません。
3.介護ベッドの購入に適しているケース
介護用ベッドは高価な商品も多いため、購入するかレンタルするかは介護状況に応じて検討するのが良いでしょう。
介護保険を利用すると、レンタル費用が一部補助されることがあるため、経済的な負担を軽減できます。要支援1・2、要介護1〜5に認定された方は、介護保険を利用して介護用ベッドをレンタルすることができます。
一方で適切に購入することができれば、レンタルよりも費用の面で軽減できたり、レンタルするよりも高い効果を見込むことも可能です。以下では購入に適しているケースについて紹介します。
- 2~3年以上の利用を考えている場合
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2~3年以上の利用を想定しているのであれば、レンタルよりも購入した方が結果的に費用が安く済むケースが多くなります。とくに要介護度が低く、介護保険が降りなかったり、もしくは要介護度が高く、自宅介護が長く続く見込みがある場合には購入に適していると言えます。
- 介護する側の負担が大きい人
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一人で介護をしていたり、老老介護であったり場合、介護は体力に大きな負担をかけます。とくに長く介護が続いたり、介護度が高く寝たきりになっていたりすると負担はさらに大きくなることでしょう。
腰痛や体力的な負荷を考えると、例えば電動式の介護ベッドを購入することで、高さ調整や背上げ機能、体位変換機能などで介護者の負担を大きく軽減させることができるようになります。
- レンタルに抵抗が生じている高齢者
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介護される側にとって、ベッドは生活の中で大きな位置づけを占めるものです。そのため、レンタルにすると「他人が使ったことのあるもの」として抵抗を感じる人は少なくありません。
中には「このベッドで人がなくなったかもしれない」とか「誰かが排泄したベッドかもしれない」ということで大きな心理的抵抗を抱える人もいることでしょう。快適かつ安心できる介護生活を求めるのであれば、介護ベッドは購入に適しています。
購入時の注意点
介護用ベッドは機能のみならず、購入時と処分時に注意する点があります。
- 購入時:ベッドは大きく重量があるものです。購入後、玄関先で渡されてしまうと搬入や設置に大きな手間がかかってしまいます。購入するときには、必ず「開梱設置」サービスがあるものを選びましょう。
- 処分時:ベッドは処分する際に費用が生じます。高額な電動ベッドであれば、中には買い取りをするサービスも存在しますが、購入に比較して買い取り費用は安価なものです。介護の期間が短かったり、後に老人ホームへの入居を検討しているようであれば、レンタルについても考えてみても良いでしょう。
4. 介護用ベッドの選び方
介護用ベッドは、利用者の快適さと介護者の負担軽減を両立する重要なアイテムです。しかし、選ぶ際には種類や機能、費用面など多くの要素を考慮する必要があります。例えば、利用者の介護度によって必要な機能が異なり、設置スペースや費用も選択に影響を与えます。
また、マットレスや付属品の選び方一つで利用者の安全性や快適性が大きく変わることもあります。ここでは、介護用ベッドを選ぶ際に押さえるべきポイントを詳しく解説。利用者と介護者の両方が安心して日々を過ごせるよう、失敗しないベッド選びをサポートします。
1. 介護用ベッドの種類と大きさ
【種類】
電動ベッド
- リモコンやボタンで操作でき、背上げ・脚上げ機能や高さ調整が可能です。
- 介護者の腰への負担を減らし、利用者も自分で操作できるため、自立を促す効果があります。
- 要介護度が高い方や、日々の介護負担を軽減したい場合に最適です。
手動ベッド
- 背上げや脚上げ、高さ調整が手動で行えるタイプです。
- 電動より価格が安い反面、介護者が直接手を使って調整するため、体力的な負担が増します。
- 短期間の使用や、比較的軽い介護度の方に適しています。
固定式ベッド
- 高さや角度を調整する機能がなく、シンプルな作りです。
- コストを抑えられる一方、利用者の快適性や介護者の負担軽減には向いていません。
- 介護が必要になる前段階や、一時的な利用に適しています。
【大きさ】
標準サイズ
- 幅90~100cm、長さ200cm程度で、一般的な家庭用ベッドに近いサイズです。
- 狭い部屋でも設置しやすく、使いやすい基本的なサイズです。
広めのサイズ
- 幅120cm以上の広めのベッドは、体格が大きい方や寝返りを頻繁に行う方におすすめです。
- スペースが必要ですが、より快適な介護環境を提供します。
高さ調整機能
- 床からの高さを変えられるベッドは、利用者がベッドから立ち上がりやすく、介護者も腰を痛めにくい設計です。
- 高さの幅は40cm~70cm程度が一般的で、ベッドの脚部分に昇降装置が付いています。
2. マットレスの種類
- ウレタンフォームマットレス
- 軽量で、取り扱いが簡単なため、介護者にとって使いやすい素材です。
- 反発力が適度で、比較的体が軽い方や介護度が低い方に適しています。
- 手入れがしやすく、費用も抑えられるため、初めての導入に向いています。
エアマットレス
- 空気圧を調整して体圧を分散する仕組みで、床ずれのリスクを大幅に軽減します。
- 特に、寝返りをサポートする機能がついたモデルは、重度の要介護者に最適です。
- 電動ポンプ付きの場合、静音性やメンテナンスが選ぶ際のポイントとなります。
高反発マットレス
- 適度な硬さがあり、寝返りをサポートする効果が高いです。
- 筋力が弱くなっている方や、腰痛を持つ方に向いています。
- 長期間使用してもヘタりにくい耐久性が特徴です。
低反発マットレス
- 柔らかく、体の形にフィットするため、長時間同じ姿勢を保つ必要がある方に適しています。
- ただし、柔らかすぎて動きが取りにくくなる場合があるため、利用者の筋力や介助が必要な程度に合わせて選ぶ必要があります。
3. 寝返りについて
- 寝返りが必要な理由
- 寝返りをしないと、長時間同じ部分に圧力がかかり、床ずれや血行不良を引き起こす可能性があります。
- 高齢者や筋力が低下している方は、自力で寝返りができないことが多く、介護者の補助が必要です。
- 電動背上げ・脚上げ機能
- ベッドが自動で角度を調整して体位変換をサポートします。
- 特に夜間の介護負担を軽減し、利用者の快適な睡眠を促します。
- エアマットレスの寝返り補助
- 自動的に体圧を分散する機能により、介護者が直接寝返りを手伝う回数を減らせます。
- マットレスが利用者の体を少しずつ動かすため、利用者が気づきにくい自然な寝返りが可能です。
- 補助用具
- 体位変換クッション
– 寝返りを手伝うために利用者の体の下に差し込んで使うクッションです。
– 柔らかさや形状により、介護者の力を軽減しながら自然な体位変換を実現します。
- 体位変換クッション
回転式マットレス
特殊な設計で、マットレス自体が軽い動きを加えることで寝返りをサポートします。
利用者が自力で体を動かしにくい場合に便利で、介護者の負担も軽減されます。
4. 付属品
サイドレール(柵)
- 転倒防止:利用者が寝返りや移動中に落下するリスクを防ぐ必須アイテムです。
- 取り外し可能:ベッドからの移動をスムーズにするため、必要に応じて取り外しができるタイプがおすすめです。
- 高さ調整や、片側のみ使用できる設計のものもあります。
ベッド用テーブル
- 食事や作業に便利:利用者がベッド上で快適に食事を取ったり、手作業やリハビリに活用できます。
- 高さや角度調整:利用者の体勢に合わせて調整可能なタイプが便利です。
点滴スタンド
- 医療ケアが必要な場合に使用し、点滴を安定して行えるように設計されています。
- ベッドに直接取り付けるタイプや、移動可能なスタンドタイプがあります。
移動用リフト
- ベッドから車椅子や椅子への移乗をサポートする装置です。
- 電動式や手動式があり、介護者の体力的負担を大きく軽減します。
5. 利用者側の介護度
- 軽介護度(要支援~要介護1)
- 比較的自立した動きができる場合は、固定式ベッドやシンプルな手動ベッドでも対応可能です。
- 付属品を最小限に抑え、利用者自身で操作しやすい環境を整えるのがポイントです。
- 中介護度(要介護2~3)
- 背上げ・脚上げの電動機能があるベッドを使用することで、介護者の作業負担を減らします。
- 転倒防止のため、サイドレールや体圧分散マットレスの導入を検討するのがおすすめです。
- 重介護度(要介護4~5)
- 体圧分散型のマットレスや、複数の電動機能を備えたベッドが適しています。
- 介護者の負担軽減を最優先に考慮し、リフトや他の補助機器との併用を視野に入れます。
6. 費用面
- 購入
- 電動ベッド:10万~50万円程度。高機能モデルではさらに高額になります。
- 手動ベッド:5万~15万円程度。コストパフォーマンスを重視するなら手動式が選択肢に。
- レンタル
- 介護保険を利用することで、月額数千円~1万円程度で利用可能です。
- 短期間の利用や、利用者の状態に応じて柔軟にモデルを変更したい場合に最適です。
- 介護保険の活用
- 要介護認定を受けた場合、特定のレンタル費用を保険でカバー可能です。
- 購入時には介護保険の補助が受けられないケースが多いため、長期的な利用を見据えて計画することが重要です。
7. その他
- 設置スペース
- ベッドの周囲に介助スペースを確保できるか確認してください。
- 狭い部屋に設置する場合、折りたたみ式や省スペース型のモデルも検討すると良いです。
- メンテナンス性
- 電動ベッドは定期的な点検が必要です。故障時のサポート体制や修理費用を確認しましょう。
- マットレスやカバーが洗濯可能か、交換が簡単かも重要なポイントです。
- デザイン性
- 木目調やシンプルな色合いのデザインは、家庭のインテリアに馴染みやすく、心理的な負担を軽減します。
- 木目調やシンプルな色合いのデザインは、家庭のインテリアに馴染みやすく、心理的な負担を軽減します。
- 将来の対応力
- 介護度が進行した場合にも対応できる、機能が拡張可能なベッドを選ぶことで、長期的な安心感が得られます。
4. 介護用ベッドの安全な使い方
介護用ベッドを安全に使用するためには、以下のポイントに注意が必要です。
(1) サイドレールの適切な使用
サイドレールは転倒防止のために重要ですが、過度に頼らないよう注意が必要です。必要に応じて取り外しや調整を行い、安心して使用できるようにしましょう。また、サイドレールに手すりを取り付けることで、立ち上がりがしやすくなります。
(2) 定期的なメンテナンス
介護用ベッドは頻繁に調整を行うため、メンテナンスが欠かせません。定期的に動作確認を行い、リモコンやモーターが正常に動くか、各パーツに緩みがないかを確認しましょう。また、マットレスやベッドシーツも衛生的に保つために、こまめに掃除や交換を行います。
(3) 安全な設置場所
ベッドの周囲には、必要なスペースを確保し、通路や扉の妨げにならないように配置します。介護者が動きやすいように、両サイドからアクセスできるよう配置することが理想的です。
介護用ベッドは、利用者の自立を支援し、介護者の負担を軽減するために欠かせないアイテムです。高さ調整や背上げ機能、サイドレールなど、多機能な設計により、安全で快適な生活環境を提供します。選ぶ際は、利用者の身体状況や設置場所、操作性に応じて最適なものを選び、定期的なメンテナンスを行って長く安全に使い続けましょう。また、介護保険の利用や購入・レンタルの選択も検討し、経済的な負担を抑えながら導入することがポイントです。